羊水検査までの間、やっぱりいろいろな思いがこみあげてくるものがあって、
仕事も手につかず、ミスしてしまいそうな自分がいた。
そんな自分が怖くなって、上司に相談し、しばらく休ませてもらうことになった。
それからは、子供たちと過ごす時間も増えて、子供たちの笑顔に救われる日々が続いた。
夫も、あれから少しずつ信頼を取り戻すかのように、私の体をより気遣うようになった。
そして、今日とうとう羊水検査の日。
そんな中、早朝から電話が鳴った。母からだった。
とても焦った声で、「お父さんが急変したって。今からお母さんも病院行くから、すぐ来て!」
もともと持病で糖尿病から腎不全を患い、透析も数十年していた父。
それでも自分の好きな料理を食べる美食家で、母をいつも悩ませていた。
そんな父が数日前から体調を崩して、肺炎のため入院していた。
先日お見舞いにも行って、年末の話をしたり、私の体調を気遣ってくれたり、退院の話まで出ていた矢先だった。。。
「どうして?なんで?」
焦りながらも準備をして、義母に子供たちを任せて、病院に向かった。
どうか、どうか、間に合いますように・・・
行く道中、車の中で電話が鳴った。。。
母からのか細い声だった。。。
「間に合わなかったわ。お父さん。あかんかった・・・」
「とにかく今向かってるから、気をしっかり持って!」
そう言って、冷静を何とか保ちながら、高速に乗った。
父の顔を浮かべながら、涙がとめどなく溢れてきた。
前が見えなくなりそうで、何度もぬぐいながら運転した。
到着すると、父は静かに眠っていた。。。
母が来た時には心臓マッサージをしている最中で、もう助からない状態だった。
母がもういいですと伝えて、マッサージは終わり、今、父は眠っている。
姉夫婦も来ていて、いろいろな手続きをしてくれていた。
透析でお世話になっていた病院で、付き合いも長い看護師さんたちも、父の急変に気づけなかったようで、ショックと悲しみにくれているようだった。
入院中の父のことを語りながら、一緒に着替えを手伝ってもらい、最後の挨拶をして、退院した。
何度か病院で経験していることとはいえ、自分の身内がこのような立場になったとき、
この虚しさは本当に何とも言えない気持ちだった。
あっけない。。。実感が湧かなかった。
亡くなってから、すぐに葬儀場を決めて、葬儀のやり取りや書類のことなど、いろいろな手続きがあり、
憔悴しきった母に代わって、姉夫婦がテキパキと動いてくれて、ありがたかった。
私は姉に一旦任せて、仕事途中で来てくれた夫とともに、羊水検査に向かった。
向かう車の中で、夫と父のことを話した。まだ実感が湧かなくて、まだどこかにいるような感じがした。
クリニックについて、羊水検査へ。
エコーをしながら、局部麻酔をかけて、太い注射針がお腹に刺さる。
夫はそばでずっと、手を握ってくれていた。
少しの痛みと、圧迫感、羊水を吸われている、今まで味わった事のない気持ち悪い感覚。。。
ずっと緊張していて、深呼吸を繰り返していた。
そんな中、なぜか父も、そばで見守ってくれているような気がした。
「大丈夫、大丈夫…」
検査は約30分ほどで終了した。
夫は仕事に戻り、私は葬儀場に戻って今後の予定を聞いて、一旦家に帰った。
帰ると、心配した様子の子供たちが待っていた。
どう説明しようか悩みながら、
「おじいちゃん、死んじゃった。お空にいっちゃった。
でもちゃんとお空で見守ってくれているからね。」と明るく言った。
長女と長男は「さみしいよ・・・」と泣いていた。
次女はまだわかっていなくて、「お空に行ったの?もう会えないの?いやや!」と駄々をこねていた。
でも、お腹の子のことも含め、またこの子たちに悲しい思いをさせなければいけない・・・
そう思うと余計に辛かった・・・。
長い一日が終わった・・・。